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2008年2月26日

ディスポーザメーカー、環境支援製品として欧州とアジアで販売推進
グリーン化によるグローバル化

ザ・ウォール・ストリート・ジャーナル
[英ウスター=イラン・ブラット]

ジャッキー・シェルドンは、バナナの皮とオレンジの皮を流し台の排水口に投げ入れ、政府の補助金を受けて設置したディスポーザのスイッチをオンにした。子供たちのために地球環境を改善しようと考えてのことである。

アメリカ以外で定着するまで何十年もかかった家庭用ディスポーザだが、環境を意識した建築家や自治体政府関係者という新たな支持者を集めている。エマソン・エレクトリック社傘下のInSinkErator®社(ウィスコンシン州ラシーン市)は、ヨーロッパや一部のアジアの地方自治体に対し、ディスポーザは排水管をつまらせ、下水処理施設の経費を増大させる水の無駄遣いであるという考えを改めてもらおうとロビー活動を続けてきた。

世界中で使われているディスポーザの約80%を製造しているInSinkErator®社によると、1990年代初期ではヨーロッパでの販売実績はほぼゼロであったという。多くの自治体は、堆肥化の方が生ゴミ処理に適していると主張し、ディスポーザの構想に抵抗感を抱いていた。しかし、地球温暖化に歯止めをかけ、環境への影響を低減させることに各国政府が取り組むようになると、同社はこの機会をとらえ、新しいメッセージを打ち出した。「わが社は、環境に優しい、ゴミ問題の解決策としてディスポーザを発明したのではありません」欧州事業部担当部長のジョー・フェラーラ氏は言う。「しかしディスポーザは、あらゆる点で、環境にプラスの影響を与えるものなのです」

グリーン戦略のおかげで、InSinkErator®社の世界全体の年間売上は過去10年間でおよそ520億円(5億ドル)とほぼ倍増したと関係者は語る。同社は、約2兆2970億円(約220億ドル)の年間売上を誇るエマソン・エレクトリック全体から見れば、ごく一部にすぎないが、ヨーロッパにおけるディスポーザの販売台数は今や毎年10万台以上にのぼる。

米国では、一般家庭の約半数が既にディスポーザを備えているため、InSinkErator®社は環境に重点を置いた売り込みには余り力を入れていない。最近は、新規顧客の開拓や、既存モデルのアップグレードを希望する高所得の消費者を中心に国内販売を伸ばそうとしている。新機種は、旧型のディスポーザでは詰まりを生じやすいセロリなどの繊維性の生ゴミも難なく処理できるという。

InSinkErator®社によると、ウィスコンシン州在住の建築士ジョン・ハムズ氏は、1927年に自宅地下室の工房で、流し台に連結する生ゴミ処理装置を発明した。食後の後片付けがしやすく、ゴミ容器にたかるハエや悪臭の発生を取り除く方法を求めていたのである。彼は1938年に会社を立ち上げ、第二次大戦後の住宅ブームに乗じて売上を伸ばした。米国の一部の都市では、新築の際にディスポーザの設置を義務づけていたという。

ディスポーザはゴミ運搬車による渋滞の緩和に役立つため、InSinkErator®社は、人口密度の高いヨーロッパに最適な装置として奨励してきた。しかしこの方法は、ごみ処理の負担を、既に経費のかさむ下水処理施設に移すだけのことだと批評家は主張している。

ディスポーザの環境に対するプラス面とマイナス面の兼ね合いは複雑である。有機廃棄物の埋立地への運搬には、いくつかの問題点がある。まず、公害をもたらすゴミ運搬車の使用が必要である。さらに、生ゴミを一般ゴミと混ぜると、リサイクル可能な物品の分別が困難になり、水分を含む廃棄物を焼却するためより多くのエネルギーを必要とする。そして最も重大なことは、埋立地そのものが、温室化の原因となる多量のメタンガスを発生することである。

しかし、ディスポーザを通した生ゴミの処理も、別の問題を引き起こすのである。 いくつかの調査によると、水の使用量が現在よりも増えてしまう。公共の下水設備を通して廃棄物が処理施設に運ばれる間に、粉砕された生ゴミが詰まりの原因となることが懸念される。下水処理後の施設に残るスラッジが増え、その処分にコストがかさむ。

イングランドのメイズモア市に本拠を置く環境コンサルタント、ジョン・ヘンリー・ルーニー氏は、英国での廃棄物利用を調査した結果、都市部におけるディスポーザの使用を支持するようになった。「ゴミの総量とCO2が減ります。これは重要なことですよ」と彼は言う。 環境に優しい組織を認定する米グリーン・ビルディング・カウンシルは現在、ディスポーザを導入する住宅にポイントを与える制度を検討している。

1998年、当時マディソン市のウィスコンシン大学の学生であったキャロル・ディゲルマン氏は、博士号論文の中で、ディスポーザを支持する説を発表した。

InSinkErator®社の資金援助による彼女の研究は、埋立地と堆肥場への運搬を含む5種類の生ゴミ管理方法について、コストおよび環境への影響を分析するものであった。

現在はミルウォーキー工科大学の教授であるディゲルマン氏は、生ゴミをディスポーザを通して処理し、メタンガスを電力に変える下水処理施設に搬送する方法は、下水スラッジの量を増加させるが、消費エネルギーと用地の所要量が最少の処理法であると結論づけた。また、自治体政府にとっても最も低コストの代替案であった。

InSinkErator®社の幹部は、オーストラリア・シドニーと日本の政府関係者にこれらの結果を提示して、長年にわたるディスポーザの使用禁止を撤回するよう説得したという。両国で行われた調査では、ディスポーザを支持する結果が得られている。
スウェーデンのマルメ市 は、200台以上のディスポーザを集合住宅に設置し、環境維持の可能性を探る政府支援のプロジェクトが行われている。ディスポーザは下水管には連結されておらず、粉砕した生ゴミをメタンガスに変え、そのメタンガスを燃やして発電する別のシステムに連結されている。ロンドンでも、2千戸の住宅開発予定地を対象とした同様のシステムが検討されている。

生ゴミから燃料を回収

スウェーデン・マルメ市では200世帯以上もの家庭が、台所の排水口に廃棄された生ゴミから天然ガスと肥料をつくり出すシステムに接続されている。

  1. 粉砕されたゴミは地域の処理施設に送られ、液体ゴミと固体ゴミに分離される。
  2. 固体ゴミはダイジェスタに送られ、燃料源であるバイオガスに変換される。
  3. 液体ゴミは下水処理施設に送られる。
  4. 処理施設とダイジェスタに残った廃棄物を併せ、ゴルフコースや田畑の肥料として使用する。
  5. (資料提供:マルメ市)

ディスポーザの賛同者は、英国を特に有望な候補地と見ている。既に装置を設置している住宅は約5%で、各自治体は、生物分解性廃棄物の減量化を義務づける法律の遵守に苦慮しているからだ。

ウェールズに近いウスターおよびヘレフォード英国州政府は、2005年、一般市民によるディスポーザの購入に対する資金援助を開始した。自治体政府の要請により、環境コンサルタントのティモシー・エバンズ氏が昨年夏に行った既存データの分析によると、予想される廃棄物処理コストの削減は、3年足らずで資金援助額を相殺するという。エバンズ氏は、InSinkErator®社および下水処理会社の仕事も請け負っている。

ウスター州に住む42歳の助産婦であるシェルドンさんは、ディスポーザのおかげで、2週間ごとに街頭に出すゴミ袋の数が4個から1個に減ったと言う。粉砕された生ゴミは、地域の下水処理施設で処理される。この過程で発生するメタンガスは発電用として回収される。「子供がいると、この子たちが大きくなった時のことを考えるでしょう。」シェルドンさんは言う。ディスポーザは、「埋立地に行くゴミの量を本当に減らせるのです。」

しかし、ディスポーザが廃棄物管理に有用なツールであることを世界中の人々に納得させるのは容易ではない。ポルトガル、オーストリア、オランダでは、ディスポーザの使用が依然として禁止されている。ディスポーザによる水と電力消費量の増加を不満とする政府関係者や環境団体もあり、ディスポーザは有機廃棄物の堆肥化を推進しようという努力に水をさすものだと述べている。

『アプライアンス』誌によると、InSinkErator®社が2006年におよそ690万台のディスポーザを販売した米国では、ディスポーザの使用台数が増えると、有機廃棄物を既に処理能力ぎりぎりまで受け入れている下水処理施設の改造が必要になると多くの技術者は言う。

「新しい町や都市のインフラストラクチャを最初から構築するのであれば、ディスポーザは素晴らしい方法でしょう」企業に対して水の有効利用をアドバイスするニュージャージー州ヒルズボロー市のコンサルタント、エド ・クレリコ氏は語る。「しかし、既存システムを相手にするとなると、これは本当に難題です」

翻訳:日本エマソン

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